札幌の6月には、本州のような梅雨はありません。
しかし、「梅雨がないから体調を崩しにくい」というわけではありません。
日中は暖かくても朝晩は肌寒く、服装や室温の調整が難しい時期です。さらに、4月からの新生活、就職、転職、異動、進学、引っ越しなどの疲れが、少し遅れて表面化することもあります。
この時期に、次のような不調を感じる方がいます。
・朝起きるのがつらい
・寝ても疲れが取れない
・動悸やめまいがある
・胃腸の調子が悪い
・頭痛や肩こりが続く
・気分が落ち込む
・仕事や学校に行くのがつらい
患者さんの中には、こうした状態を「自律神経失調症かもしれない」「自律神経が乱れているのでは」と感じる方も少なくありません。

この記事では、寒暖差と自律神経の関係について、わかりやすく解説します。
◎自律神経とは何か
自律神経とは、私たちが意識しなくても身体を調整してくれている神経の仕組みです。
心拍数、血圧、呼吸、体温、発汗、胃腸の動き、睡眠と覚醒のリズムなどに関わっています。
自律神経には、主に交感神経と副交感神経があります。
交感神経は、活動する、緊張する、集中するときに働きやすい神経です。
副交感神経は、休む、眠る、消化する、回復するときに働きやすい神経です。
よく「交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキ」と説明されます。実際には、どちらか一方だけが働くのではなく、状況に応じて細かく調整されています。
◎寒暖差があると、身体は何をしているのか
寒暖差が大きいとき、身体は体温を一定に保とうとします。
寒いときには、熱を逃がさないように皮膚の血管を縮めたり、筋肉を緊張させたりします。寒い日に首や肩が凝る、手足が冷えるのは、この反応と関係しています。
暑いときには、熱を外に逃がすために血管を広げたり、汗をかいたりします。
つまり、朝晩は寒く、日中は暖かい日が続くと、身体は短い時間の中で「寒さへの対応」と「暑さへの対応」を繰り返します。
この調整そのものは正常な働きです。
しかし、睡眠不足、疲れ、ストレス、運動不足などが重なると、身体の調整に負担がかかり、不調として感じられることがあります。
これが「自律神経が乱れている」と表現されることがあります。
◎札幌の6月に不調が出やすい理由
札幌の6月には、本州の梅雨とは違った特徴があります。
1. 朝晩と日中の寒暖差
日中は暖かくても、朝晩は冷えます。
服装や室温調整が難しく、身体が気温差に対応しようとして疲れやすくなります。
冷房が入り始める時期には、屋外と屋内の温度差でも不調が出やすくなります。
2. 日が長くなり、生活リズムがずれやすい
札幌の6月は日が長く、夜になっても明るさが残る時期です。
そのため、つい夜更かしをしたり、活動時間が遅くなったりします。
寝る時間が遅くなる一方で、起床時間は変わらないため、睡眠不足が積み重なります。睡眠不足は、自律神経の調整、気分、集中力、食欲にも影響します。
3. 4月からの疲れが出てくる
4月は、新生活や環境の変化が多い時期です。
就職、異動、転職、進学、引っ越し、人間関係の変化などがあると、最初のうちは緊張感で乗り切れてしまうことがあります。
しかし、6月頃になると緊張が少しゆるみ、疲れが一気に出やすくなります。
◎寒暖差で出やすい症状
寒暖差、生活リズムの乱れ、ストレスが重なると、次のような症状が出ることがあります。
身体の症状
動悸、息苦しさ、めまい、立ちくらみ、頭痛、肩こり、胃もたれ、吐き気、下痢や便秘、食欲低下、手足の冷え、汗をかきやすい、だるさ、疲れやすさ。
睡眠の症状
寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、寝ても疲れが取れない、朝起きるのがつらい。
こころの症状
気分が落ち込む、不安が強い、イライラしやすい、集中できない、仕事や学校に行くのがつらい、人と会うのが面倒になる、以前楽しめていたことが楽しめない。
こうした症状は、単独で出ることもあれば、いくつかが重なって出ることもあります。
「自律神経だけ」と決めつけないことが大切です
動悸、めまい、息苦しさ、だるさなどがあると、「自律神経のせいだ」と考えたくなるかもしれません。
たしかに、ストレスや睡眠不足、寒暖差によって、これらの症状が出ることはあります。
ただし、同じような症状は身体の病気でも起こります。
たとえば、動悸では不整脈、甲状腺疾患、貧血などが関係していることがあります。
めまいでは、耳鼻科の病気、起立性低血圧、片頭痛関連のめまいなどが関係していることがあります。
だるさでは、貧血、睡眠時無呼吸、内分泌疾患などが隠れている場合もあります。
そのため、心療内科・精神科では、「自律神経の不調」としてすぐに決めつけるのではなく、必要に応じて内科、耳鼻科、循環器内科などでの診察も考えます。
◎寒暖差の不調と、適応障害・うつ病・不安症
寒暖差だけで説明できる不調もありますが、実際には職場や学校のストレスが背景にあることも少なくありません。
特に6月は、新年度から2か月ほど経ち、次のような問題が表面化しやすい時期です。
・新しい職場になじめない
・業務量が増えてきた
・研修が終わり、実務が本格化した
・上司や同僚との関係に悩んでいる
・学校や職場に行く前に体調が悪くなる
・休日は少し楽だが、日曜の夜からつらくなる
このような場合、適応障害、不安症、パニック症、うつ病などが関係していることがあります。
朝になると吐き気がする、仕事のことを考えると眠れない、職場に近づくと動悸がする、欠勤や遅刻が増えてきた場合は、早めに相談することが大切です。
◎受診を考えたほうがよいサイン
次のような状態がある場合は、心療内科・精神科への相談をおすすめします。
・動悸、めまい、息苦しさが繰り返し起こる
・不眠が続いている
・朝起きるのがつらく、遅刻や欠勤が増えている
・食欲が落ち、体重が減っている
・気分の落ち込みが2週間以上続いている
・仕事や学校に行こうとすると体調が悪くなる
・休日も疲れが取れない
・以前楽しめていたことが楽しめない
・「自分はだめだ」と責め続けている
・「消えてしまいたい」「死にたい」と感じることがある
特に、「死にたい」「消えたい」「自分を傷つけたい」という気持ちがある場合は、我慢せず、すぐに身近な人、医療機関、救急窓口、相談窓口につながってください。
◎自分でできる寒暖差対策
症状が軽い段階では、生活や環境を整えることで改善することがあります。
1. 服装で温度差に備える
札幌の6月は、朝晩と日中で体感温度が変わりやすい時期です。
薄手の上着やカーディガンなど、調整しやすい服装を用意しましょう。
2. 起きる時間を固定する
生活リズムを整えるには、寝る時間よりも起きる時間をそろえることが大切です。
休日に昼まで寝てしまうと、夜眠れなくなり、月曜日の朝がつらくなることがあります。
3. 朝に光を浴びる
朝の光は、体内時計を整える助けになります。
起きたらカーテンを開ける、短時間でも外に出る、朝の散歩をするなどが役立ちます。
4. カフェインとアルコールを見直す
午後以降のカフェインは、睡眠に影響することがあります。
また、アルコールは寝つきをよくするように感じても、睡眠の質を下げ、夜中に目が覚めやすくなることがあります。
不眠が続く場合は、お酒で眠ろうとせず、医療機関に相談しましょう。
5. 予定を詰め込みすぎない
6月は、仕事や学校に慣れてきた分、無理をしやすい時期です。
疲れが強いときは、予定を減らすことも大切です。
「休むこと」も、回復のための大事な行動です。
◎心療内科・精神科ではどのような対応をするか
心療内科・精神科では、症状の内容や程度に応じて、次のような対応を検討します。
睡眠リズムの調整、生活習慣の見直し、ストレス要因の整理、休養の必要性の判断、職場や学校への対応の相談、不安症・パニック症・うつ病・適応障害の評価などです。
必要に応じて薬物療法を行うこともありますが、必ずしも薬だけが治療ではありません。
症状の強さ、生活への支障、患者さんの希望、これまでの経過を踏まえて、一緒に治療方針を考えていきます。
◎まとめ
札幌には本州のような梅雨はありません。
しかし、6月の札幌では、朝晩と日中の寒暖差、日照時間の長さ、新年度からの疲れ、睡眠リズムの乱れが重なり、心身の不調が出ることがあります。
寒暖差があると、身体は体温、血圧、心拍、発汗、胃腸の動きなどを調整しようとします。
その負担が大きくなると、動悸、めまい、不眠、だるさ、胃腸不調、気分の落ち込みとして現れることがあります。
これらは、いわゆる「自律神経失調症」と表現されることもあります。
ただし、背景には、睡眠不足、ストレス、適応障害、うつ病、不安症、身体疾患などが関係している場合もあります。
「季節のせいだから仕方ない」
「自律神経だから治らない」
「気合いが足りないだけ」
そのように考えて我慢し続ける必要はありません。
不眠、動悸、めまい、気分の落ち込み、仕事や学校に行けないつらさが続く場合は、心療内科・精神科にご相談ください。
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